グルントヴィは、今日のデンマーク教育の礎を築いた人物であると言える。今回は、グルントヴィの引用と解説文、並びに彼の後継者でもあるコルの『子どもの学校論』等にもとづきながら、デンマークの教育思想について読みすすめ理解を深めていった。
近代デンマーク国家形成に大きな影響力を持った人物としてアンデルセン、キルケゴール、そしてグルントヴィの3人を挙げることができる。3人に共通しているのはオーラルである。今日に至るまでの口頭教育の重視へと結びついている。彼らがデンマークにおけるオーラルの伝統を築いたと言える。またオーラルとしての語り(対話)とともに母語による教育の重要性を述べ、これまでのラテン語(死せる言語)教育を中心とする教育を批判した。そして「祖国の歴史と古い伝説、格言的なことわざ、母語による民属民衆的なもののすべて、こうしたものが庶民学校での対話の対象となるのだ。」と述べている。グルントヴィが北欧神話や伝承文学の掘り起こしに熱心に取り組んだことと、母語の教育を重視したことは一体であったと思われる。彼は、それらを通じて民衆を啓蒙し、近代デンマーク国家の国民を形成しようと考えていたのだろう。
読書会のなかでは、グルントヴィが北欧神話や伝承文学を重視したことと、彼が聖職者であったこととをどう考えればよいのか。彼のなかでそれらはどのように結びついていたのかとの質問が出された。紹介されたオヴェ・コースゴールの資料には、「グルントヴィの啓蒙の思想は、彼の一般的歴史的な三位一体『個人』『民衆』『人類』についての思想にもとづいている。別の言葉でいえば『個人』『国民(民衆、人民)』『世界(宇宙)』の関係がグルントヴィの教育思想の基本を形成するのである。」と記されている。このことから推察すると、三項の「人類」「世界(宇宙)」あたりに、彼の聖職者としての思いや考えが関わってくるのではないかと思った。
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