ジョン・スチュアート・ミルの代表的著作といえば、自由とは何かを論じた『自由論』があり、また19世紀後半以降の女性の自立と解放、婦人参政権を導くバイブル的存在とも言える『女性の解放』がある。余談になるが、ちなみに『女性の解放』の原題は『The Subjection of Women』であり、直訳すれば『女性の服従』となる。日本の『女性の解放』というタイトルは、原題とは180度異なる。教育(論)についてミルが直接的に言及したものは少ないが、晩年に『大学教育について』を著している。読書会では、以上に挙げた3つのテキストをもとにミルの思想について読みすすめました。
ミルは、私たちが学ぶ目的を「将来自らの仕事に役立つような知識を少しでも多く身につけるということにあるのではなく、むしろ人間の利害に深くかかわるあらゆる重要な問題について何らかの知識をもつことにある」とし、一般教養教育の重要性を指摘し、一つの分野や領域に秀でるような教育のあり方を「たんなる無知以上に悪い結果を生み出すでしょう」と指摘し、「人間性というものは、小さなものに熟達すればするほどますます矮小化し、重要なことに対して不適切になっていくであろうと予測せざるをえません」と批判します。また教養を構成する要素として、科学と人文学の他に第三の構成要素として美(詩と芸術)を挙げ、「感情の陶冶、美的なものの育成」を挙げています。
さらに進歩とは、われわれのもつ意見と事実との一致をより近づけることにあり、私たちが生活のなかで身につける様々な先入観(色眼鏡)から脱却するためには、他の国民が身につけている「色の違った眼鏡」を身につけることが必要であることをも説いています。
以上は、彼の『大学教育について』で言及されていることですが『自由論』での言論表現の自由とそれを統制することへの批判や論争の自由、『女性の解放』での男女同権の原理などは、どれも深く結びつき響き合っていることが見えてきます。
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