『教育』を読む会 9月例会

日時 2019年9月21日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
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参加費 無料
テキスト 『教育』2019年9月号
内容

特集1 縛られる学校、自らを縛る教師たち
特集2 誰もが何かのマイノリティ
学校や教師の不自由さや息苦しさはどこからくるのか。これまでもゼロトレランスや日々の教育的営為を画一化する様々な〇〇スタンダード、PDCAサイクルによる教育評価など「上」からなされる「縛り」についてはみてきました。今回の特集1では、さらに教師の内面に分け入って縛るものの実態に接近し、またそのような様々な「縛り」からどうしたら抜け出せるか、そんな希望についても話し合っていければと思います。
特集2では、今の日本社会や学校に生きづらさを感じているマイノリティの人たちが、「多様なままに共存していける社会」をめざし取り組んできた活動などの報告です。今の現状と課題などについて話し合いたいと思います。

前回の
様子

8月24日(土)13:30から、8月例会を開催しました。
『教育』8月号に執筆された埼玉大学の高橋哲さんをお招きし、大学研究者6名と現職教師3名を含む総勢12名参加の有意義な会となりました。
今回(前回)の報告と感想は、毎回要領よく適切にまとめてくださっている宮城教育大の本田伊克さんと、大木一彦さんにもお願いしました。二人にお願いしたこともあり、いつもより長い報告となりますが、充実した会の様子と内容が皆さんにも伝わると思います。

8月号の特集1「『学校の働き方』を変える」のうち、高橋哲さんの論稿「教職員の『多忙化』と給特法―『学校における働き方改革』答申批判」を読み、高橋さんを交えて議論をしました。というより、それぞれ聞きたいことを率直に尋ね、丁寧に答えて頂きました。
いわゆる「働き方改革」答申については、管理者に労働時間を含む労働条件を整備する責務がほんらいはあるところ、教職員個人に労働時間短縮と業務精選の責任を押しつけ、教育行政が教育の仕事にほんとうに必要な予算も人もつけない、カリキュラムを過密化させている責任を現場に転嫁するという、大変に問題のあるものだということがはっきりわかりました。
高橋哲さんが指摘されている点で特に重要なのは、給特法が「限定4項目」(①生徒実習に関する業務、②学校行事に関する業務、③職員会議に関する業務、④非常災害等やむをえない場合に必要な業務)に限って時間外勤務を認め、それを「4%」の教職調整額の対象に包摂しているという考え方がそもそも間違っているということです。
そうではなくて、給特法のもとでも労働基準法36条は適用除外されておらず、「限定4項目」以外の時間外勤務はもちろん、「限定4項目」についても管理者(校長)と三六協定を締結しうるということです。
この点は、たいへん重要なことで、高橋さんの論稿に教えられました。
教師は労働者か教育者ということについても、二項対立的に考えることは避け、教育の仕事をしっかりとやるためにも、教師の労働上の権利と条件を整備していく必要があるということなのだと思いました。【文責:本田】
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 高橋先生の論文を中心に、本年1月25日に公表された、中教審最終答申とガイドラインを批判しつつ、「教員の多忙」の問題を解決していくためにどうしたら良いか、活発な議論が交わされた。
  現場から《仙台市でも毎年過労により教員が亡くなったり、職場復帰できない重大な疾病にかかったりしている現状を下に、もはや教員の多忙の問題は、教育を子ども中心ではなく、教員中心の問題として考えていかなければならないほど深刻な状況なのではないか》との問題提起がされた。
  こうした教員の多忙の原因として、教員への4%の教職調整額と引き換えに、教員への時間外勤務手当・休日勤務手当を支給しないとした「給特法」があり、労基法の「三六協定」が適用されないため使用者は、罰金も割増賃金も支払う義務もなく、「働かせ放題」という現状が生まれていることがある。給特法では、超過勤務を命じることができるのは、「限定4項目」に限定されている。にも拘わらず「限定4項目外」の時間外勤務が多くを占め、その時間が「自発的行為」として取り扱われてきたことを高橋論文をもとに、共通認識として確認した。
  そして、今回の最終答申・ガイドラインは、タダ働きを「可視化」するものとしては評価できるものの、ガイドラインで設定された、月45時間、年360時間の目安を守る責任は使用者に課せられるのが当然のことであるはずなのに、労働者自身の自己責任とされ、その達成状況で人事評価されかねないという危険性も明らかになった。
  こうした問題を解決する方向として、一方で「給特法廃止」論がある。教員の専門性がここまで無視されるなら、教員の専門性に拘らず、一労働者として見ていいからと考え、教職調整額を廃止し超過勤務手当の支給を求める方向性である。しかし、この方向性だと、給特法の対象外である私学の現状から考えて、基本給が引き下げられるだけだという高橋先生などからの指摘があった。
  一方で、「給特法維持」論に立ったままで、中教申最終答申・ガイドラインに沿う形のままで、教員の仕事を本当に削減できるのかというと、教育委員会・校長に削減できない時の罰則も経済的負担も課せられない現状では難しいと言わざるを得ない。
  そこで、高橋論文では、労働者法学者の青木宗也氏らの指摘に基づき、給特法は維持し教員の専門性を認めた上で、「限定4項目」以外の、現状で超過勤務の大半を占める「限定4項目外」の業務について、三六協定を結ばせる運動を提起している。給特法が結ばれる前に、全国で超過勤務手当の支給を求める裁判闘争が闘われ、手当支給の必要性を認める最高裁判決を勝ち取ったことが、教職調整額の支給に繋がった歴史に鑑みても、それぞれの教職員組合としても取り組むべき価値のある提案であると感じた。
  今回の読書会は、宮城県内の大学の民主的立場の多くの研究者に参加いただいたことで、高橋論文についての詳細な理解が深められる意義深い会となった。ただ高橋先生が雑誌「教育」で発信した論文の中で、一番反響がないということもうかがい、現場教員の中に、もっと読者や読書会への参加者を増やしていかないと、現場はもったいないことをしているなと強く感じた。私なりにできることを進めていきたい。【大木】