『教育』を読む会 5月例会

日時 2021年5月22日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
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参加費 無料
テキスト 『教育』2021年5月号
内容

【5月号】
特集1  コロナと教育と民主主義
特集2  教科研の教育学入門Ⅱ

コロナに関わる特集は、昨年の「コロナ一斉休校と子ども・教育」(8月号)、「コロナ禍と教育—その危機と希望—」(11月)、今年に入っては「コロナ禍で問われる学校の役割」(2月号)、「コロナ禍での挑戦を新年度の学びに」(4月号)があり、今回で5回目になります。コロナは私たちの健康と保健衛生の問題・課題だけでなく、私たちの生き方や社会のあり方に大きな問いと課題を投げかけています。もちろんそこには、これまでの教育とこれからの教育への問いがあります。

5月号の特集1は、民主主義に焦点を当てた特集となっており、巻頭には、東大の宇野重規さん(政治思想・政治哲学)のインタビュー「コロナ禍で民主主義の未来を展望する」が組まれ、また高校生たちによる座談会「コロナ禍の学校で民主主義を志向する」など、多彩な内容となっています。
特集2は、今年の2月号の後編となります。教科研委員長経験者である田中孝彦さん、佐貫浩さん、そして現委員長の佐藤広美さんの3人が、戦後教育の事実と実践に寄りながら、その中で教科研における教育学研究は何を問い探求してきたのか、ご自身の研究の歩みにもとづいて論じます。

前回の
様子

2021年4月24日(土)10:00~12:30に、みやぎ教育文化研究センターで『教育』を読む会を行いました。コロナ禍ではありましたが9名の参加がありました。
今回は、『教育』2021年4月号の第1特集「コロナ禍での挑戦を新年度の学びに」から、岨賢二さんの「今こそ創ろう! くましろ祭」を輪読し、議論しました。
岨さんの学校は、もともと6年生が学校行事を運営していく流れは残っていたようでしたが、運動会ができなくて悲しいという子どもたちが、新しい運動会(「くましろ祭」)を実現したいという思いを企画・運営の組織づくり、感染対策についての学び、教員への根拠をもった提案を通じて実現していく様子がよくわかりました。この学校の取り組みを扱ったTV番組を録画していた参加者がいたため、その映像も見ながらの話し合いとなり、より一層学校と教師、子どもたちの様子がわかりました。
現在、正規の教育課程の領域として位置づいている特別活動については、かつての「自由研究」から「特別教育活動」と「学校行事」に分かれ、前者は子ども主体、後者は学校中心という区分があったこと。この二つが「特別活動」として一本化されたときに、学校が運営する、あるいは学校が管理する学校行事になってしまったという経緯の話が参加者からありました。
さらに、もともとは地域と学校で別々に行っていた行事が学校行事に一本化され、地域の人々が期待するものとの関係の中で、学校が行事の在り方を見直したくても見直せないようになっていく場合もあること。こうした動きとはまた違って、地域の行事の性格もあった学芸会が、学校での日常的な学習発表の場である学習発表会になっていくのと同じように、運動会も「体育発表会」など、日常の体育の授業の成果発表の場になっていく場合もあること。こうした点についても話題になりました。
教科外活動を通じて、子どもの主体性が重視され、子どもが自ら様々なことを企画し、調整し、力を合わせて実現していくことを保障している取り組みとして読みました。
朝から夕方まで一日かけての運動会という光景は、もはや過去の思い出になってしまうかもしれないにしても・・・。でも子どもたちと、子どもたちを支える先生たち、地域の人たちとの協働から生まれるこんな取り組み、こんな学びって素敵だし大事だなと思います。

第2特集「命・健康の教育と養護教諭の仕事」からは、宮城『教育』を読む会の参加者でもある数見隆生さんの「管理の対象化がすすむ命と健康」を読み合いました。
「健康に関する管理主義」は、「子どもを学力形成の対象としか見ない痩せ細った教育観と子どもを問題行動や負の心身状況に対する管理対象として見る仕事観に分離する現象」(68頁)であり、令和の日本型学校教育答申が推進しようとしている改革は、「学校機能の本質(人間らしく生きる基本的素養と真理と平和を希求する社会の形成者の育成)」を「すこぶる弱体化」(71頁)させているという指摘には頷かされます。
話し合いで出た論点として興味深かったのは、養護教諭の養成課程でも、看護の領域で修士号や博士号を取得し、看護のアセスメント観を強くもっているため学校の他の教員と連携することが難しいケースもあること。養護教諭自身も、自らが主体的・創造的に取り組んでいる教育実践だと思えるもの、あるいはそのような教育実践を行っている、行えるという実感に乏しく、言われた通りにすることで責任を問われないようにする傾向もみられるなど、そんな養護教諭をめぐる状況や課題も語られました。子どもが「自己のからだの主体」(68頁)になること、「からだの科学」をくぐらせる学びを保障すること(70頁)が大切であるということを、私自身教職科目の講義などでも、もっと広めていきたいと思います。                    (文責:本田伊克)