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『教育』を読む会 7月例会

日時 2022年7月16日(土)
10:00~12:00
会場 みやぎ教育文化研究センター
会場の詳細はこちら
参加費 無料
テキスト 『教育』2022年7月号
内容

【7月号】
特集1  対話・自治・シチズンシップ
特集2  地球時代に向き合う教育学を求めて

6月初めに開催したセンターの運営委員会のなかで各委員から教育・子育てなどで気になっていることや考えていることについて発言してもらいました。
その中に、現在のロシアによるウクライナ侵攻に関わって、学校現場からのリアクションや取り組みが見えてこないという発言がありました。
特集1では、政治や社会のあり方を問う声を上げにくい空気の中で、子ども・若者が現実世界と向き合い考える主体にどうしたらなっていくことができるのか。若者たちの生きる世界、学校の現状から考え合いたいと思います。
プーチン大統領の核兵器使用への言及は世界を震撼させました。特集2では、核戦争が始まれば人類が滅亡しかねないという危機意識を含んだ「地球時代」という視点から、今日の教育と教育学について考え合いたいと思います。

前回の
様子

6月25日(土)10:00~12:00、『教育』読者の会を行いました。
参加者が5名と少なかったですが、活発な議論になりました。これから、もう少し輪を広げていけるといいなあと思います。
今回は、6月号の特集1「保護者の願い、学校の現在」から、巻頭の山田哲也論文「『知識基盤社会』像をどう編み直すか」と、特集の総括論文となっている大日方真史論文「保護者のつながりと学校の課題」を読み合いました。
山田論文は、誰もが知識とスキルを備えることが今後の社会で鍵となるという「知識基盤社会」という社会像を多くの人々が共有しているという現状に立脚したうえで、では、どのような「知識」を、誰にとって、いかなる意味で「基盤」であるのかを捉え返そうとするものです。将来への不安の念に掻き立てられ、その不安に対処するための手段(道具)として知識を捉えるのではなく、「公共財」として捉えること、「利他主義をわが子だけに適用するのではないかたちで、知識の習得・産出の別様な道筋を模索しなければならない」(12頁)ということです。
知識をいかなる意味合いで捉えるのか、あるいは知識の「世俗化・脱人間化」(8頁)というとき、それが歴史的・文化的にどのような出来事を指すものか。援用されているバジル・バーンスティンが想定していた英国あるいは欧米でのニュアンスが、日本の文脈に適用されるとき、意味合いの違いが生じることがあるかもしれないという意見もありました。
そうしたことをおさえつつ、山田論文は、知識について人格と切り離せない側面と分かち伝えることができる側面の両方を捉えようとしていることに意義があります。知識のそれぞれの側面について、市場が要請する在りようについて批判し、私たちが目指し求める在りようを、トマス・ジェファーソンの「ろうそくの火」のメタファー(11頁)を援用しながら展望しています。
大日方論文からは、コロナ禍のなかで保護者のつながりを形成することがますます難しくなってはいるが、学校教育に対する保護者の私的関心を、わが子のみではなく教室の子どたちへと向けられる「共通関心」(43頁)へと広げていくことの大切さと、共通関心を形成するうえで教師が発揮する専門性の大切さを学びました。学級通信など、教室での子どもの学びや育ちの様子を発信し続けることが、それを目にする保護者のみならず、教師にとっても「学習」の機会となっているという話もありました。
保護者と学校・教師が手を携えて、公共的なかたちで知識を分かち合うような学びを教室に実現していく。そうすることで、この社会の在り方も変えていくきっかけを作っていく。こうしたことの大切さを確認できた例会でした。
(文責:本田伊克)