前回(7月)は、「術」についての話だった。「術」とは、制作物を生み出す営みのこと。人間におけるもっとも重要な術は、言語と手職、「ものがたり」と「ものづくり」。
その言語の発生や発展に、神話がとても重要なはたらきをしたというのが、とても驚きであった。神話観が変わった。神話というと、今までの私の印象は、作り話で、非科学的なもの、為政者に都合のいいように作られたもの、どちらかというと忌むべきものであった。それが、人類の言語の発達にとってとても重要なはたらきをしたというのだ。人間が言語を生み出すとき、自然の驚異に驚き、それに意味を与えようとしたり、世界の始まりを考えようとしたりしたという。
それから、世界の神話には、同じような話がたくさんあるというのも、興味深かった。
大昔の人間は、そのように自然の声によくよく耳を澄まし、自然の素晴らしさや脅威をしっかりと感じ、その意味を考えたり、周りの人間と相談したりしてきたのだろう。
太田先生は、神話から芸術へという問題は、災害の問題と無関係ではないとおっしゃった。今私たちが、自分たちの制作物を過信し、大昔の人間のように自然の声に耳を澄まさず、作り出した物の意味や影響を感じなくなってしまっていることが、大きな災害を招くことにつながっているということか。感受性を繊細にすることの重要性を感じる。
後半は、手職の話だったが、よく分からなかった。特に西田幾多郎の「行為的直観」の考え。
次回が「ものの世界」なので、また「もの」について考える。その中で、少し理解が深まればと期待している。
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